An integrated semiconductor device enabling non-optical genome sequencing

言わずとしれた ION torrent の論文。論文には新しいことは何も書いてないよ、という話だったんですが、誰かに ION torrent を紹介するときに「あのデータはこのペーパーにあるよ」と言えると楽なので一応何が載ってるかは読んでみることにした。

CMOSのISFETで、Drain-Source間に金属のfloating gateをくっつけて酸化タンタルのレイヤーを挟んで水素イオン濃度を読み取る仕組み。詳しい図が載っているのを見たのは初めてだなぁ。

ウェルの数は 1.2M, 6.1M, 11M のものをそれぞれ製作し、99.9%は pH センサーとして使えるらしい。プロセスルールは CPU が 20nm 台に突入している時代に 0.35um もあるそうなので今後の微細化に期待したいところ。まぁ、プロセスルールを細かくすると減価償却の終わった古いファブで作れなくなってきてチップの単価が跳ね上がりそうなので、本当に微細化する方が良いかどうかは難しいかもしれない。光学系が無くて1台あたりのマシン価格が安いことを活かし、チップも単に大量生産で価格を落とすのを狙う方が良いのかも。なんせ塩基は修飾無しだし、8インチウェハーで200枚も取れてプロセスルール0.35umのチップなんて大量生産すれば1ランあたりの単価は1万円ぐらいでも十分商売になりそうだ。

110nmプロセスで1.68umのウェルも試作はしてみたらしい。それ以上の記述はないので、実際に読み取りを試したかは不明。ウェル数が増えてくるとセンサー値をホスト側に転送するのもだんだん辛くなってくるだろうから少し開発には時間がかかるだろう。

ライブラリー調整のやり方は長らく不明(秘密?)だったが、論文にはライブラリー調整方法が記述されている。大方の予想通り 454 と基本は一緒だ。ビーズは 2um もあるので、80万コピーものフラグメントがビーズ上に載るらしい。Illumina HiSeq 等と比べると1桁近く上となる。ウェルへは遠心で配置し、ウェルのサイズ的にビーズは1つしか入らない。

ホモポリマーの解像度はやはりあんまり良くなくて、長さ5のホモポリマーは 97.3% でしか今のところ当てられない。が、454 よりはまだマシであるとのこと。20-40%程度のウェルしか活用できていないがこれはライブラリー調整が失敗しているビーズが多かったり、ビーズがちゃんと入っていないウェルが多かったり、そんな理由らしいので今後に期待。

ムーアさんのゲノムを読んでみました、とのことだが、人選も含めてシャレなのだろう。10.6xのION torrentリードとABI SOLiDの15xリードを比べてSNPは99.95(ヘテロ), 99.97(ホモ)ぐらい整合性があったとのこと。数字が高すぎるので SNP として判定する場所を結構絞っているのだろう。

AGBTで発表を聞いたときには "ホモポリマーは大丈夫!" と言っていたのに全然大丈夫じゃないのでちょっと裏切られた感があるが、好意的に解釈するとまぁ使える状態にするためにいろいろ弄ったらやっぱりホモポリマーはダメになってしまったのだろう。